もっと詳しく: 相続の放棄について

1.はじめに

ここでは、分かりやすくするために妻一人子2二人を残して夫が亡くなった場合の事例を基に説明します。
通常、このケースでは、相続人は妻と二人の子供ということになります。ただ、夫に多額の借金があり、逆に夫名義の資産はほとんど残っていないといった場合、そのまま相続すると借金についての負担も相続人が負うことになります。
このような場合に、借金というマイナスの相続財産を引き継がないための手段が相続の放棄です。
相続放棄は亡くなられた方(被相続人といいます)の権利・義務を一切引き継がないというものですので、マイナスの財産だけ引き継がないということはできません。
プラスの財産、マイナスの財産をよく調査・整理した上で決断する必要があります。
特に注意を要するのは、人の保証人(普通の保証債務)になっているようなケースです。このような場合、借金・債務として分かりにくいので、気付いたときには期限切れで相続の放棄ができなくなっていたということのないように注意しましょう。
 

2.相続の放棄の手続

1)誰が行うの?

相続人それぞれが行います。本件の例では、妻及び二人の子供です。相続の放棄を行わなかった方が相続することとなります。
ここで注意が必要なのは、子供が二人とも相続放棄したら、法律の定めにより、次の順序の法定相続人があらたに相続人となるということです。
次の相続人とは夫の父母ということになりますが、一般的には、夫より上の世代の方が残っていることは少ないでしょうから、実際にはさらにその次の夫の兄第姉妹が相続人となります(兄弟姉妹がなくなっている場合はその子供達)。
なくなった方の子供が相続放棄したことで次の相続人となる場合は、その方々も相続放棄について検討する必要があります。

2) いつまでに行うの?

相続の放棄は、法律上の言葉で言うと「自己のために相続の開始があったことを知った時から、3ヶ月」です(民法915条)。
つまり、通常は、なくなった日から3ヶ月ということになります。
ただ、家出をして音信不通となっている様な子供の場合は、なくなったことを知らされた日からということになるでしょう。
また、先の例で、子供が相続放棄をした結果、自分が相続人となったことを知った兄弟姉妹については、その子供が相続放棄をしたことを知らされた日から3ヶ月ということになるでしょう。もちろん、亡くなられた方にお子さんがおらず、兄弟姉妹が第1順位の相続人となる場合には、なくなったことを知った日からとなりますので、ご注意下さい。
なお、事情によっては、申立をした上で、3ヶ月程度の期間延長(つまり合計6ヶ月程度)が家庭裁判所に認めてもらえることがあります。

3) どのように行うの?

亡くなられた方の最後の住所地の管轄家庭裁判所に申立をおこないます。
(管轄については裁判所のサイト参照)
申立書(申述書)については、こちら(裁判所のサイト)
その際には、いっしょに添える書類として最低限
  • 申し立てる方本人の戸籍謄本
  • なくなった方の除籍謄本、住民票の除票(それぞれ最後の本籍地、住所地の役所でお取り下さい)
    ※取り寄せ方法について→横浜市の例
  • 収入印紙800円
  • 連絡用郵便切手
が必要なります。
なお、遠隔地の方もご安心下さい。郵送での申立も認められております。提出する書類の確認、収入印紙、郵便切手などの確認も含め、直接家庭裁判所に問い合わせされるとよろしいかと思います。

4) 弁護士への依頼

通常は、上記の通り本人での申立も十分可能です。
ただ、添付書類である戸籍を取り寄せるのが一般の方だと難しいことがあります。
裁判所によっては、亡くなられた方の「生まれてからのすべての戸籍」を取り寄せるよう求められることがあるからです。
このような場合に、弁護士に依頼して頂ければ、申立代理人として裁判所に書類を提出することはもちろん、その前提として戸籍を取り寄せるお手伝いをさせて頂きます。
費用の目途は、一人あたり金31,500円~+戸籍取り寄せなどの実費です。是非ご利用下さい。